敷地は郊外の住宅街に位置し、東西に奥深く形状である。西側を道路、南、西面を隣家に面している。南からの採光と屋外の緑を生活にとりいれ、近隣からのプライバシーを確保した、大らかな空間と素材感を感じられる家をめざした。
■トンネル形の構造形式
配置と建物の構成は、敷地の南側に東西に長い庭を設け、庭に面して間口9メートルの大きな開口部と吹抜けを設けている。また、道路側駐車スペースの上部には寝室である二階部分がオーバーハングしている。このような構成を木構造で実現するため、長方形断面の柱と梁を455ミリ間隔で配し、屋根面、外壁面、床面を構造用合板で固めるトンネル形の構造形式を採用した。
■構造を感じ、素材を感じる家
屋内空間は、規則的に連続する柱、梁および集成材の大梁をそのまま仕上げとして表している。構造材の力強さに同調すうように、床にはチークの無垢材と佐久石を用い、素材の持つ質感、存在感を感じられる空間とした。
■夏と冬で逆転する空調システム
内部は主寝室を除いてはほぼ間仕切りのないワンルーム形の空間であるため、全館空調を用いた。今回、初めての試みとして、家全体を一つの空調空間とらえる発想から、夏期冬期逆転の空調システムとした。夏期は吹抜け上部に吊るしたソックダクトより冷気がにじみ出し、降下したのち一階床に設けたスリットからレターンとして吸込まれる。一方、冬期は空気の流れが逆転する。床スリットから暖気がわき上がり、吹抜け上のソックダクト差し込み口が吸込口となる。さらに一階床下全体を空調チャンバーとしているため、緩やかな床暖房の効果ももっている。この方式により空気の性質を活かした効率的な空調を実現している。
竣工 :2012年11月
所在地 :埼玉県さいたま市
構造規模:木造2階建て
敷地面積:139.60㎡
建築面積:78.66㎡
延床面積:127.71㎡
施工:山崎工務店株式会社