東大泉の家
新建築住宅特集2012年5月号掲載
練馬区の住宅地に立地する、およそ15坪強の狭小敷地に設計した40代夫婦と子供のための小さなRC造の住宅である。
■ナナメの階段
動線の中心となる階段を、家の中心にナナメに配置し、それに連なるように様々なレベルを持つスペースを連続させた。静的な正方形プランの中に、ナナメの要素が配置される事で、動きのあるシークエンスをつくり出す事ができた。また、ナナメに切り取られた空間は、見る方向によっては逆パースの効果により実際以上の広さを感じさせてくれる。また、階段は単なる動線でなく、ある時はベンチのように利用され、動きのある生活空間の一部としても機能している。
■矩形の箱
平面的に考えた場合、正方形の敷地の中に正方形のプランを落とし込む事はきわめて自然である。ただ、今回の場合は、立体的にも道路斜線や北側斜線の影響を感じさせないような矩形の箱の形態をつくる事がテーマとなった。結果、建物は半地下に埋め込まれ、1600ミリというやや中途半端にも思えるような天井高を持つロフトスペースが生まれたが、かえって新鮮な空間体験をできる場となったように思う。
■メスルーム
この家の中心は「メスルーム」と名付けられた家族が集うスペースである。メスルームとは実は施主のネーミングであるが、船の中等の「会食室」を意味するとの事。これからこのちいさな家で住み続けるという「航海」は始まって間もないが、設計者として行く末を注意深く見守ってゆきたい。
竣工:2010年3月
所在地:東京都練馬区東大泉
構造規模:RC造地上2階 地下1階
用途:戸建住宅
敷地面積:51.76平方メートル
建築面積:31.03平方メートル
延床面積:75.11平方メートル
施工:関口工務店