知粋館
知粋館は、3次元免震を備えた世界初の集合住宅である。従来の2次元免震は水平方向の揺れに対してのみ有効であるが、今回採用した3次元免震は直下型地震により発生する垂直方向の揺れに対しても有効である。
このプロジェクトは、住宅地の中で周辺環境への連続性に配慮しつつ、さまざまな先進的実証実験の場として計画された。免震システムの開発は、2005年より東京大学藤田隆史先生の指導のもと、建築主でもある構造計画研究所、清水建設、カヤバシステムマシーナリーにより行われ、建築設計は並行して2006年より開始された。
全体構成は、地下部分が免震装置を組込んだピット空間、1階がPS梁による無柱空間で、人工地盤に見立てた2階部分は6戸の独立性の高い住居を配置している。1階部分は、将来間仕切りを撤去して柱のないワンルーム空間としての利用も可能である。
また、本計画は超長期優良住宅として、構造躯体の耐久性、設備の更新性、バリアフリー、等につき所定の性能が確保され、維持管理の面は住宅履歴管理システム「SMILE」により運用され、国交省の第一回超長期住宅先導的モデル事業に採択された。
竣工わずか8日後に発生した東日本大震災は図らずも三次元免震装置の実証実験の場となってしまったが、その有効性はすでに実装されていた計測機器のモニタリングにより実証された。
知粋館は、構造計画研究所の実験建物としての意味合いも強いが、その社風でもあるチャレンジ精神が今後も受け継がれ、超長期優良住宅にふさわしく200年存在し続けてくれる事を設計者として願う。
新建築 2011年8月号