拭き漆仕上げの床
1.事例概要
斜 面地に立地する、モザイク作家のためのアトリエ併用住宅で、斜面部分の基礎を兼ねている地下部分はRC造、1階部分は木造とした。建築主が「ものつくり」 であるため、全体の仕上げ計画もなるべく工業的でなく、極力「手の跡」が残る仕上げ材料を使用して、アットホームな生活空間をかたちづくることを意図した。
拭き漆仕上げの床は、建築主の友人でもある漆作家の柴田克哉氏によるものである。工程は完全な「手仕事」であり、材料の段階で入念な仕上げを行い、現場にフローリングを貼り付けた後に全体の調子を見ながらタッチアップを行っている。
2.床の仕上げに関して
(漆の下地材料)
床材料は漆の発色を考慮して、桧無垢フローリングを使用している。
((株)石川林産)
サイズは15×105×3650(ミリ)のものを使用した。
3.拭き漆の仕上げについて下地処理はプレーナーを掛けた後、超仕上鉋盤または240番か320番のサンダーがけをして下地を整える。使用漆はMRと呼ばれるもので、紫外線に強く、京都の寺院等でも使用されているものである。
塗りの手順は、まず生地固めとしてフローリングの表裏面および小口面に漆をへらまたは刷毛により塗る。乾燥は気温20度、湿度70%の室内で8時間乾燥さ せる。乾燥後320番のペーパーにより空研ぎをする。2回目の塗りは表面のみに施した後に布でよく拭きあげ、同様の乾燥にかける。3回目は2回目と同じ作 業をくり返し、工場での作業を終了する。
現場にてフローリング張り付けの後、現場での切断面等のタッチアップを施し完成する。
建築知識2005.5月号