建築・環境デザインについて


建築・環境デザインについて

―これから建築をまなぼうとする学生へ向けてー

1.建築家とはどんな職業か

  建築家とは読んで字のごとく、建築の設計をするプロフェッショナルの事を意味します。ただ、実際には設計する分野は多岐にわたり、建築のみならず、都市や 環境のデザインから、部屋のインテリアのデザイン、ひいては照明器具や家具など、身の回りのものも含めてのデザインをする職業です。
都市のデザインと建築のデザイン、家具のデザインなど一見してスケールが違いすぎて関連が薄いように見えるかもしれません。ただ、実際には共通点があり、 それは「人間が生活するさまざまな空間、環境を設計する」という事だと思います。ものの大小はあれ、自分のアイデアや考えで、「もの」を創り出してゆくの が建築家の仕事です。 建築の設計をするにあたっては、とてもさまざまな知識や素養が必要になります。

工学的な知識は言うに及ばず、たとえば、いかに美しい建物をつくりだすか、という点においては、美的なセンスが必要になります。環境の事を考えた建築をつ くり出すためには、素材の成り立ちや、エネルギーの事に精通している必要があります。設計図を作成する上ではコンピューターの知識も必要ですし、社会の中 でものを仕事をしてゆく限り法律的な事もある程度知っている必要があります。また、建築をつくるにはお金が必要ですから、経済的なセンスというものも必要 かもしれません。また、何より建築は「人間のためにつくる」という大目的がありますから、人と積極的に関わって行くことのできる素養がなくては、よい建築 をつくり出すことは到底不可能です。

 このように、さまざまな事柄をモザイクのように組み合わせ、時には現実的な判断をしながらも、自分や社会の理想を目指して「もの」を極めて、つくり出してゆくのが、建築の設計そのものであると言えます。
 建築の設計は、理科系、文化系、芸術系といった区分けになかなか分類できるものではありません。とりあえず大学の学部にはそのような分類分けがあるかも しれませんが、実際の仕事は、その範疇にとどまらないことを理解しておく必要があると思います。


2.どのような学校で勉強をするのか

 建築を勉強する学科は大きく分けて下記に分かれますが、建築の設計を学ぶという点については、大きな差はないと思います。ただ、入試のカリキュラムなどはそれぞれ異なっています。

・工学部系
 最も数が多く、大学も多岐に渡ります。建築学科という名称が最も多いですが、近年「環境デザイン科」といったように「建築」だけでなく「環境」といった 名称を学部名に使用する場合が増えているようです。また、建築設計だけではなく、構造力学、建築施工、歴史、建築理論など、関連する他の分野が併設されて おり、その後のさまざまな進路の選択の余地があります。
具体的な大学の例:東大、東工大、京大、横浜国大、千葉大、早稲田、法政、慶應(近年)、東京理科大、明治大、芝浦工大 など多数

・美術学部系
 数はそれほど多くはありませんが、将来建築設計の分野にほとんどの学生が進むようです。また、家具のデザインなども行う場合もあります。(私が学んだ東 京芸大での初めての課題は、実際に自分で椅子をデザインして、自分で工具を使用して作り出すことでした)
具体的な大学の例:東京芸大、筑波大、武蔵野美術大学、多摩美術大学など

・その他
 いくつかの女子大に「住居学科」、「生活芸術学科」などの名称で、建築の分野を学ぶ学部、学科があります。
具体的な大学の例:日本女子大、昭和女子大など

 建築学科に進学した場合の学生生活は、大変忙しいものになる場合が多いようです。これは通常の授業に加えて、「設計課題」が出されるためです。具体的に は、たとえばある敷地を想定して、実際に設計を行うもので、提出期限までに図面や模型等を作成します。これは大学に日中いる間に終わるものではなく、多く は自宅に持ち帰って設計を行うことになります。また、図面や模型を創のは大変時間がかかりますから、提出締切近くになると徹夜も辞せずといった事にもなり がちです。また、卒業時も他の学科は卒業論文を提出するのが一般的ですが、建築学科の場合は「卒業設計」といって、論文に替わるものとして設計案を提出す る場合も多くあります。


3.附属の先輩はどのようなところで活躍しているか

 附属は数ある高校の中でも、非常に多くの建築家を輩出しています。附属高校の同窓会組織の一つに、「桐陰建築会」というものがあり、メンバーは何らかの 形で建築の設計に関わっている人ばかりなのですが、他の高校で同じような「建築会」の同窓会あるという話は聞いたことがありません。

 私の代(84回)でも10人位の建築会のメンバーがおり(特に私の代は人数が多いようですが)他の代でも平均5人くらいのメンバーがいる場合が多いよう です。附属の卒業生は非常にバランス感覚に優れている人が多く、物事をトータルに考える必要がある建築設計というものには、向いているのかもしれません。

 主な卒業後の進路としては、設計事務所、建設会社設計部、大学研究室、官庁といったところが多いと思います。また、独立して、建築設計事務所を自分で主宰している人も数多くいます。

 どんな仕事でもそういう面はあるのかもしれませんが、特に建築の設計というのは、絵を描くのと一緒で、「これで終わり」というのが基本的にはありませ ん。どうしても自分が納得するまで設計を突き詰めてしまうものです。ですから、仕事としてみると、勤務する時間も長く、なかなか「時短」の効きにくい職業 の一つかもしれません。自分の職業の選択という意味では、何といっても設計が好きであるということ、ものを創り出すことが好きであるということが、重要な ポイントになると思います。

 ここ最近、耐震偽装の問題が取りただされています。建築の設計が、大変責任が重く、社会的にも大きな影響を持つ仕事だと言うことは、今回の例を見ても明 らかです。一部の人の問題で建築設計に携わる人全体に影響が出ているとしたら大変悲しいことです。プロフェッショナルとしてのモラルと誇りを持って、建築 設計を自分の仕事としてくれる人が後に続いてくれることを望みたいと思います。
以上


筑波大学附属高校進路説明会に向けて
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