タイル目地洗出し仕上について


タイル目地洗出し仕上について

■住宅の概要

 都心の住宅地に立地する戸建て住宅である。擁壁と建築を一体化させて周辺の良好な環境に連続感を持たせて調和させつつも、ファサードを印象的なものとして形づくっていくことを意図している。また、仕上げ全般の考え方として、「生成」の素材を使用してゆくことを考えた。


■グラデーション

この建物の全体の考え方の基本になっているのは、「グラデーション」ということである。すなわち、内と外、あるいは部屋と部屋が緩やかに連続するような空 間構成となるように考慮している。このために、特別に一部分を際だたせるというのではなく、全体の色調も緩やかに移り変わっていくような構成を持たせるよ うに考えた。
形態的には、道路に向かって直角に立てられた2枚の壁柱が全体の構成を形づくる基本になっている。この象徴的な2枚の壁柱を強調する事を意図し、かつメン テナンスに配慮して、この部分のみをタイル張りとし、他の部分は原則としてマヂックコートによる塗り仕上げとした。


■タイル目地洗い出し仕上げ

タイル部分の特徴は、目地を骨材入りのものを使用した「洗い出し目地」としている点である。これは、全面に塗った目地材を乾燥前にスポンジなどを使って酸 で洗い出し、目地材の骨材を表面に浮き出させる工法である。これにより、あたかもタイルが土壁の中に塗り込めたような表現が可能となる。

タイルは表面をスクラッチ仕上げとして、縦張りにて使用している。形状は20・×225・の石器質ボーダータイルである。表面のみ釉薬をかけて着色したタ イルではなく、内部まで同じ材質である「土もの」タイルとして質感を出すようにした。目地幅は15mmと通常よりも少し大きくとり、洗い出し目地部分の意 匠を強調している。


■塗り材仕上げ部分

 この部分は、骨材入りのマヂックコートの左官仕上げで、表面がなるべくラフに仕上がるようにした。色は、タイルの目地材に限りなく近づけた特注色で、全体の色の構成が「グラデーション」となることを意識している。


■ルーバータイル

 道路に面したファサードには、個室のプライバシーを確保する意味で、ルーバーを取り付けている)。この部分の材質はこれに取り合う部分の外壁タイルと同 色のタイルで製作した。この部分もやはり外壁と同様に土ものタイルとしている。外壁のタイルと同一のタイルメーカーに特注色で依頼した。取付けは、この中 空になった部分に金属製の補強材を貫通させ、それを両端の下地にボルト接合している。


■注意点など

 今回の建物は、主にはタイル(外壁とルーバー)、塗り材(マヂックコート)、の2つの要素から構成されているが、ポイントはむしろその中間を取り持つタイルの洗い出し目地材である。
 すなわち、洗い出し目地が意匠の中心となり、それにタイルが埋め込まれ、また、塗り材も、色は目地材の色に極力近づける努力を行った。これにより、全体の異素材のコントラストを抑えることができ、「グラデーション」的な外壁表現が可能となった。
 ただ、この洗い出し目地は、湿式工法につきものである、品質の良し悪しが、さまざまな条件に左右されやすい。タイルの表面に目地材が残ってしまったり、 あるいは目地材に含まれる骨材の洗い出しの仕方が不足したりするケースも見受けられる。また、酸洗いも通常の洗い出しよりも強くかける必要がある(なぜで すか?)。

 いずれにしても、現場で施工前にサンプル施工を行い、十分にでき上がりの姿を納得してから本施工を行う必要があると思う。
理由は以下の通りです。
洗い出し目地仕上げに使用するタイルは、通常表面が荒いテクスチャーの製品を使用する方が、その工法の特徴であるラフな表情を出しやすい。そのため、目地材がタイルの表面にこびりついてタイル本来の色が損なわれるので、酸でよく洗い落とす必要がある。
また、洗い出しの表情も、よく酸で洗った方が、骨材が浮き出して良好な仕上がりとなる。


建築知識2004年5月号
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