昨年より浜松市にて現場監理していた住宅が外構工事を残して竣工したので、
 写真にて建物の紹介を致します。


 ①コンセプト ~高低差のある南北の庭を繋ぐ家~


  新築前の家が南側と北側に広く木々が沢山植えられたすばらしい庭があり、
  日本間と廊下を介して、わずかに繋がるような現状でした。
  この2つの庭を積極的に繋ぐことで、敷地の特性と魅力が増すのではないか
  と考えました。2つの庭を繋ぐことは視覚的な開放感と、南北の通風を確保
  できるので、快適な環境も設計できるのではと考えました。

  竹内-1北側から南側を見る

 

竹-2南側から北側を見る


 ②外観 

 
  外壁はコンクリート打放(杉型枠W=150)とマジックコート左官仕上の2つの
  素材で仕上げました。マジックコートで仕上たボリュームは上記①コンセプト
  の南北の抜け部分の両側に配置される建物部分とし、コンクリート打放(杉型枠)
  で仕上たボリュームは上記の両側に配置されるボリュームの上に乗ってくる部分
  としました。コンセプト①をより明快に表現するために2つの異なる素材を用い
  ました。


  竹-3北西側の外観

竹-4西側の外観

竹-5南西側の外観

 ③デザインモチーフを揃える


  外部の門扉や面格子はスチール材で製作しました。スチール材は溶接性も高く、
  アルミ材よりも重厚であり私自身も好きな素材です。スチールの欠点としては
  錆に対してあまり強く無くメンテナンス費用がかかる素材でもあります。
  錆に強いスチールとする為に、溶融亜鉛メッキ処理をした上にグラファイト塗装
  という鉛成分を含んだ塗装をしました。黒くマットな色となる為、ロートアイアン
  のような雰囲気になります。
  門扉2つと面格子が西側道路から同時に見えてくるので、それらのデザインを
  統一しました。密な格子にすると光が十分に室内に届かないので、軽快でかつ堅牢
  に見える格子を目指しました。


21.jpg 面格子

20.jpg 両開き門扉

22.jpg 片開き門扉

 ④夕日に照らされるアプローチ


  敷地の西側に大きな道路がある為、夕日に長時間照らされる玄関となります。
  この玄関は確認申請上は地階にあたるのですが、この夕日が室内をオレンジ色
  に照らす明るい空間になりました。
  ルイス・バラガンの建築でも室内に入る夕日が黄金色の空間に演出しており、
  光の変化を室内の印象をガラッとかえる要素として捕らえていることに習いたい
  と思っております。


DSC03661-2.jpg アプローチ・ポーチ

竹-6 玄関ホールから玄関扉を見る

竹-7 低い角度から入ってくる夕日

 ⑤室内に入ってくるコンクリート打放(杉型枠)と階段室


  外壁のコンクリート仕上を室内に延長し、箱の構造要素を明快に表現しました。
  このことで、珪藻土仕上の内壁の中に異質なコンクリートの壁面が地階~2階
  までの縦方向に力強く存在感をもって立ち上がりました。
  力強いコンクリート面とは対照的に階段はエッジ部をR面処理をして珪藻土仕上
  としたことで、柔らかな雰囲気としました。木製手摺の90°曲がり部も柔らかい
  カーブのまま繋ぎました。
  カーブ形状の木部はかなり高度な技術が必要なのですが、大工さんもよく取り付け
  て頂いたと、技術に感心させられます。
  コンクリート壁面の上部にトップライトを設けて、地階まで自然光が落ちるよう
  にしました。

DSC03700-2.jpg玄関からホールを見る

DSC03705-2.jpgホールから幅広階段を見る

DSC03708-2.jpg踊り場から階段カーブ方向を見る

竹-9踊り場2からトップライト方向を見る

 ⑥南北の庭を繋ぐ空間でもあるリビング


  リビングは天井の高い吹抜とし、西側にハイサイドライトを設け夕日が
  リビングにも入ること考えました。時間帯によっては室内の珪藻土壁を
  なめるような角度に夕日が入ってきて、左官仕上のコテ模様がグッと浮
  き出てくることもあります。
  床面のタイルは平田タイル(DTW-6060WR)の模様面と無地面をミックス
  して貼りました。アンティーク調の柄が所々入ってくることで、タイル
  仕上特有のノッペリ感が無くなりました。

竹-10リビング南西方向を見る

竹-11リビング西方向を見る ハイサイド窓がある

竹-12テレビ台家具の背面にレンガタイルを貼った

竹-13リビングからキッチン方向を見る

 ⑦アイランドキッチン


  リビングダイニングの東側にアイランドキッチンを設けました。
  リビングから主寝室に行く動線の部分にキッチンが配置されるので、
  通路も兼ねられるアイランド型の必要性がありました。
  この配置はリビングから東庭へ抜けを創ることに繋がり、3方向に
  視界が抜ける空間になります。キッチンの天板は白色のサイルストーン
  としました。食器棚の中段をガラス扉とし、ディスプレイ用のお皿で
  奥様が演出して頂く空間となりました。


竹-14キッチン西面を見る

竹-15キッチン北西を見る

 ⑧和室

  和室はモダンに崩す和室ではなく、スタンダードな和室になるように
  設計しました。天井は杉板(中杢)を目透かし張りとし、アクリワーロン
  の光天井としました。畳は備後畳としたので、経年変化による綺麗な
  黄金色になっていくことに期待したいと思います。


竹-16 光天井

竹-17 床の間

 ⑨客用便所・洗面室


  真鍮色のタオル掛け・ペーパーホルダー・水栓等で統一し、
  室内を落ち着いた空間となるように考えました。
  洗面室は外壁に面していないので、窓を設けることが困難であったので、
  トップライトを鏡の上に設けることで自然光を取り入れました。
  自然光が落てくる壁面にゴツゴツしたテクスチャのモザイクタイルを貼り、
  タイルのテクスチャが浮き出てくることを期待しました。
  また室内の幅を広く取って、車椅子対応を可能な設計としました。
  洗面室から階段方向を見ると、コンクリート打放面が建具枠に縁取られて、
  ピクチャウィンドウのように見えました。
  設計で意図していなかった発見が出来て、一人でほくそ笑んでしまいました。

DSC03726-2.jpg客用便所から洗面室を見る

竹-19洗面室から階段方向を見る

  浜松の家では、建て主様の家作りに対しての強い思いと、パワフルに走り廻る
  元気な姿に私自身も良い家になるための思いを加速させることができ、とても
  充実感のある現場監理が出来ました。
  長い期間、お付き合い頂いた施工者様にも感謝をしております。
  まだ、外構工事が残っており、南北の庭に綺麗で力強い植栽を植えて、より
  良い住環境を建て主様にお引渡ししたいと思います。

  外構が完成したら、またブログにアップさせて頂きます。   (USU)


  

sugiura-arch (2014年12月10日 20:14) | コメント(0) | トラックバック(0)

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